吉村堅樹:玉子焼き

巨人・大鵬・玉子焼きなどと、
さすがに僕が物心がついたときには
もはや言われていなかったが、
弁当にはいる定番としてはいつも玉子焼きがはいっていて、
こんなものはどこがうまいのだと、
当時の傲慢な子供としての僕はそんなふうに思っていた。


そんな僕が最近は玉子焼きがいたく気に入っている。
ちょっと手間がかかる玉子焼きである。
だしをとった後の、昆布とかつおぶしをとっておく。
大根やにんじんなどの皮をとっておく。
これを千切りにして、醤油と砂糖と料理酒と唐辛子で煮詰め、
佃煮のようにしてしまう。
(唐辛子は鞘状のものを種をぬいてそのまま放り込むのでいいだろう)
これを保存しておいて、玉子焼きの間にいれる具材として使う。
単にそれだけのものだが、これがすこぶる美味である。
かちかちに固く焼かれないよう注意されたい。吉村堅樹: