『オプティミストはなぜ成功するか』総鬱時代の必読書

うつなのはお前だけじゃない。
そう俺もうつなのだ。
ただ、俺はうつでいたくないし、そうすることができる。
そのことをこの本は教えてくれるだろう。

第一部 オプティミズムとは何か
 第1章 人生には二通りの見方がある
 第2章 なぜ無力状態になるのか
 第3章 不幸な出来事をどう自分に説明するか
 第4章 悲観主義の行きつくところ
 第5章 考え方、感じ方で人生が変わる
第二部 オプティミズムが持つ力
 第6章 どんな人が仕事で成功するか
 第7章 子供と両親:楽観主義は遺伝するか
 第8章 学校でよい成績をあげるのはどんな子か
 第9章 メッツとビオンディはなぜ勝てたか
 第10章 オプティミストは長生きする
 第11章 選挙も楽観度で予測できる
第三部 変身:ペシミストからオプティミスト
 第12章 楽観的な人生を送るには
 第13章 子供を悲観主義から守るには
 第14章 楽観的な会社はうまくいく
 第15章 柔軟な楽観主義の勧め

邦題『オプティミストはなぜ成功するか』ではなく、
原題『Learned Optimism』のほうが内容としては正しい。
楽天主義という考えは時と場合に応じて柔軟につかいこなすことができるのだというのが主題である。

うつ病の流行は、無力感を身につけた人々が増えていることを意味すると見てよい。(中略)
つまり、自分が何をしようとむだだ、という考えだ。(中略)
私は、アメリカ国内にまんえんしているうつ病の核をなすのはこの考え方だと思う。

とすればだ。
日本人がもっとうつなのは間違いない。
アメリカ以上に政治や夢に無力感を感じている人間は断然多いだろうから。


この本は単なる楽観主義推奨の本ではない。
「なぜうつは増えたのか?」を考察し、
悲観主義の効用」つまり悲観主義にはデメリットだけではなくメリットもあることにも言及し、
その上で「楽観主義と悲観主義の説明スタイル」を分析、テストも設けている。


なぜうつは増えたのか?
ここでは“自己の評価の増大”と“社会共通の認識の衰退”に原因を求めている。
“自己の評価の増大”は個人に判断・選択の自由を与える一方で、
判断・選択の義務を生じさせ、
判断・選択される側にもなることとなった。
自らが要求するものも大きくなる一方で自らが要求されることも大きくなったのだ。


社会共通の認識の衰退”というのは、
国、神、家庭などの共同体の衰退である。

個人の力が増すということは、失敗は自分のせいだということを意味する。
 自分以外の誰にも責任はないのだから。
共通の認識がなくなったということは、失敗が永続的で普遍的であることを意味する。
自分よりももっと大きな存在を信じないので、自分の失敗が破滅的のものに思えるのだ。

と語られている。
原理主義的な考え方が流行ったり、
宗教団体に帰属するひとが増えるのは、
うつの恐怖に耐えられないからだろう。


“自己の評価の増大”と“社会共通の認識の衰退”が避けられないものであるならば、
自己の失敗や成功に対する説明スタイルを変えて、
あらたな共通認識のある社会にコミットする必要がある。
僕たちはもうこれ以上不幸になる必要はない。


悲観主義の効用
悲観主義に有効な役目がないのであれば、悲観主義は歴史のなかでなぜなくならなかったのか?
悲観主義には効用があるのである。


著者が悲観主義、楽観主義的な考え方をするグループを分けて、
20回できて20回間違えるようなテストを受けさせたところ、
悲観主義的なグループは現実を正確に把握するということでは優れていたのである。


楽観主義と悲観主義の説明スタイル
うつ病はなぜこれほど広まり、
悲観主義に効用があることはわかったとしても、
人生をより楽しく生き、より多くのチャンスをつかみ、より多くの成果を得たいとは多くの人が思うだろう。
(もちろんこれは経済的なことだけを意味するのではない。)


この本では自らの楽観度を測るテストが用意されている。
(ちなみに僕はやや悲観的であった。)
説明スタイルは永続性、普遍性、個人度の三つの側面から分析される。


永続性

すぐにあきらめる人は、自分に起こった不幸は永続的であり、
悪いことは続くもので、いつまでも自分の人生に影響を与えるだろうと考えている。
無力にならない人々は、不幸の原因は一時的なものだと信じている。


普遍性

自分の失敗に普遍的な説明をする人は、
ある一つの分野で挫折するとすべてをあきらめてしまう。
特定の説明をする人は、人生のその分野では無力になるかもしれないが、
ほかの分野ではしっかりと歩み続ける。


個人度

悪いことが起こったとき、私たちは自分を責める(内向的)か、
または他の人や状況を責める(外交的)。
失敗した時自分を責める人は結果的に自分を低く評価することになる。

どんな場合でもこれが有効だということではないのだが、
その説明スタイルを意識することで、楽観主義を身につけることができるというのが主旨だ。


現代では、ほとんどすべての人が大なり小なりうつと呼ばれるような状態に一時的になることがあると思う。
そのときにはこの本がきっと役にたつだろう。


大リーグのア・リーグ優勝決定シリーズ第1戦で松坂大輔が勝ち投手になった。
初回3人に四球を与え、二死満塁に、何とか切り抜けたが、27球も費やした。
そのときの松坂のコメントがいけている。
「いつも通りの立ち上がりの悪さだったが、あれだけ汗をかけば二回以降すっきりして投げられると思った」
彼は楽観主義を身につけているようである。



おまけ
解説が広岡達郎(元西武ライオンズ監督)。

監督をやっていた時代に、これはどう鍛えてもプロでは通用しないと思う選手がいた。
ところが、この選手はこちらの言うことは何でも素直に聞いて、一生懸命やってくれる。
その彼が、一年半たって俄然変身した。めきめき力を発揮しはじめたのである。

これ金森じゃね?