世にも奇妙な現実

街中でときどき気になるものを目にする。

これはゆうちょの自動年金受け取りのポスターだが、おばあちゃんも孫もそんなにうれしいか?と突っ込まざるを得ない満面の笑顔だ。
孫にいたっては背後で祖母につねられているんじゃないかとも思われるくらいの悲壮感さえただよっている。
自動で受け取れることでこんなに喜ぶなんて利子が倍になったら涙も流しそうだ。


東京駅から帰るときだったと思うのだが、
階段の段数が書いてあって驚いた。

91という数字が多いのか少ないのかわからない。
僕は上り始めて、これに気づき、一度引き返したものの、91がどれくらいのものか確かめてみたくなり上まで上ってみることにした。
全然たいしたことがなかった。
普通の階段の段数となんらかわることがない。
どうしてこんな表示がされているのだろうか?
段数表示がされていると、一瞬思考停止しやめようかという気分になったのは確かだ。
もし階段の使わせないという思惑があるのであれば、
見事にこの階段をのぼっているひとはほとんどいない。


大雨が降った。
でもちょっと前までは晴れていた。
電車に乗ったら濡れたかさをもっているのは僕だけだった。

車内の床は乾いている。
なんてことはないんだが、濡れたかさをもって電車にのったときはすでに薄く泥色でコーティングされていることが多いのだが、このときはまっさらなキャンバスに筆をいれる、新雪にはじめて足をいれる、そのときの気分だった。
電車の速度が速まるたび、ゆるまるたび、僕のかさから生まれた水のかたまりが右へ左へ移動する。
雪舟が涙で書いた鼠の話を思い出した。