『「社会を変える」を仕事にする』したたかさとしなやかさ

『「社会を変える」を仕事にする』。
言うは易く行なうは難しなことを、ああ私もやってみたいなそんな気持ちにさせてくれるさわやかなそして巧みな文章だと思う。

プロローグ
第1章 学生でITベンチャー社長になっちゃった
第2章 「社会を変える仕事」との出会い
第3章 いざ、「社会起業家」!
第4章 大いなる挫折
第5章 世の中のどこにもないサービスを始める
第6章 「地域を変える」が「社会を変える」
エピローグ

学生ITベンチャー社長だった駒崎さん(著者)の社会企業家にいたるまでの自己発見と実践の旅といってもいいのかもしれない。


作者のそこに至る過程の思考プロセスがエピソード・物語とともに面白おかしく描かれているのだが、
その思考プロセスが克明に描かれていて、どこで思考が行き詰ったり、どのようにしてパラダイムシフトが起こったのかということがしっかりと描かれている。
文中では外資系に就職が決まった大学生の「やっぱロジカルシンキングとかやってたからかな」なんて自慢話を腹立たしく聞いていた作者だが、
社会企業家として事業を軌道に乗せるまでの作者の思考ややり方はまさにロジカルが自然にできているということがわかる。


また文章の巧みさにもふれておきたい。
作者は心理描写や状況描写、場面転換をするときに、視覚・聴覚・身体感覚の要素をふんだんに盛り込んでいる。
そのときに何が見えていたのか、どんな音が聞こえていたのか、どんな感覚が体に沸き起こっていたのか。
次にどうなるのだろうと高揚する感覚をもちながら一気に読み終えてしまった。


とりあげたことは主題からすると枝葉末節にとらえられるかもしれないが、
作者の社会企業家としてのしたたかさとしなやかさが現れていると思う。
またしたたかさとしなやかさくらい社会を変えるつもりならもっていて当然なのだろう。

You must be the change you wish to see in the world.
世界を変えたいなら、あなたが変わらなければならない(マハトマ・ガンディー)

彼はこれを身をもってやり、それを今もやり続けている