『読書の方法』『読書術』『レバレッジリーディング』『スローリーデ

読書に関する本をまとめ読み。
共通していた言葉は「読書は百遍意自ずから通ず」


『読書の方法』外山滋比古

わかりやすさの信仰
音読
教科書の憂鬱
裏口読者
アルファー読み・ベーター読み
虚構の理解
素読
古典と外国語
読みの創造
認知と洞察

“未知を読む”これをベーター読みと言っている。
かつての四書五経素読をひきあいに出して、未知に挑む大切さを書いている。
“未知を読む”にも個性的、古典的と2種類あり、
ついしてしまいがちなのが作者の背景などから感情移入をする個性的読み方であるが、
単にテキストを読み解くことに徹する古典的読み方を推奨している。


『読書術』加藤周一

急がば回れ、古典を味わう精読術
新刊を数でこなす速読術
臨機応変,読まずにすます読書術
原書に挑み,原語に触れる解読術
新聞・雑誌の看破術
難解な本をとりこむ読破術
(目次略)

一冊の本の精読が速読につながるというのが著者の考え方である。
論語・聖書・仏典・プラトンこれの中のどれかひとつを何度も繰り返し読むことで、これらすべてを一通り読むことよりも得られるものははるかに大きいだろうと、
ここでも再読の重要性が語られている。
本筋とはずれるが面白い記述があったので紹介したい。


ひとつはスノビズム(俗物根性)について。
多くの場合「知識・教養をひけらかす見栄張りの気取り屋」(wikipediaより)という意味で使われる言葉だが、
読書の場合読んだふりをするのもなかなか面白いというように書かれている。
サロンではありもしない本をさも読んだかのように語り、どこまでみんなが知ったかぶりできるかなんていう遊びもあったようだ。
それに対して、著者はドーセバカイズムという言葉をつかって、知ったかぶりすらもしない人間を槍玉にあげている。
「どーせ、私なんてバカだし」なんて言葉で、コミュニケーションを自ら断絶しているわけだが、
「どーせブスだし」「どーせ貧乏だし」「どーせ所詮この程度の人間だし」「どーせもう年だし」
このドーセバカイズムだけはやめたほうがいいということは全くの同感である。


もうひとつ耳順について。
論語の六十而耳順
六十歳で異なる考えも素直に聞き入れられるようになるという意味なのだが、志学、而立や不惑のあとはすっかり忘れていた。
それにしても60でようやく素直に聞けるようになるとは、
昔から人の話を聞くというのはそれほど難しいことだったのだなと改めて感じた。


レバレッジリーディング』本田直之

第1章
ビジネス書の多読とは何か?
100倍のリターンをもたらす究極の読書術
第2章
本探しは投資物件選び
ビジネス書の効率的スクリーニング術
第3章
一日一冊、ビジネス書を戦略的に読破する
訓練不要であなたの読み方が劇的に変わる
第4章
読んだままで終わらせるな!
反復と実践によって一〇〇倍のリターンを獲得せよ

今回読んだ4冊の中では異色なのだが、
昨今流行の読書術という観点からすれば、その流行そのものである。


著者は前提としてこれは読書のための本ではなく、
ビジネス書からどれだけ短い時間で多くのことを得るかという本だということは明言している。
ここで小説の場合はどうなんだ?というのはこの本に関してはお門違いだといえる。


土井英司・マインドマップ読書術などのメルマガは早速登録した。
読後のフォローについてレバレッジメモというものを作っていた。
これだけ多読せよ、16%わかればOKといっている中でも読後のフォローは強く薦めている。
今回のすべての書籍を通じて書籍から貪欲に得ようという姿勢、目的の明確化、再読の重要性は共通してある。


『本の読み方 スロー・リーディングの実践』平野啓一郎

第1部
量から質への転換を―スロー・リーディング
基礎編
スロー・リーディングとは何か? 
「量」の読書から「質」の読書へ 
仕事・試験・面接にも役立つ


第2部 
魅力的な「誤読」のすすめ
テクニック編
「理解率七〇%」の罠 
助詞、助動詞に注意する
「辞書癖」をつける


第3部 
古今のテクストを読む
実践編
夏目漱石『こころ』 
森鴎外高瀬舟』 
カフカ『橋』
三島由紀夫金閣寺
川端康成伊豆の踊り子
金谷ひとみ『蛇とピアス』
平野啓一郎『葬送』
ミッシェル・フーコー

レバレッジリーディングとは対極にある本だが、
ここでも著者は小説しかも良書を前提にしているので、その前提にしたがって読むべきかと思う。
ただしレバレッジリーディングと違い、しっかりした前提を置いていないところは非難されても仕方がないところであると思うし、
トラックバックさせていただいた小飼弾さんのブログでもあるとおり、
この書籍自体がまさに速読に適した書き方で作られているのは皮肉である。


それでも僕には第三部の古今のテクストを読むは随分面白かった。
読者の問いの代弁、重層的な比喩、痛みや借金などの漸増法などは作り手ならではの読み解き方ともいえるのではないだろうか。
無意識的にやっていることであったりするのだが、主人公に自分を置き換える、事件やできことの条件を変える、5W1Hや接続詞特に逆接に注目するなどはなるほどスローリーディングならではの味わい方だなと感心もした。


以上 読書に関する書籍4冊に関する書評。
もう一冊松岡正剛『千夜千冊 虎の巻 読書術免許皆伝』もやるはずだったがタイムアップ。