本当と嘘とテキーラ

くるみ

山田太一脚本のドラマ。昨日録画しておいたのを簿記の試験も終わったので楽しみに見た。

少年野球チームのユニフォームに欠陥が見つかった製造会社。相談を受けた危機管理コンサルタントの尾崎章次(佐藤浩市)は、製造会社の社長・国松重治(山恕W努)と検品担当部長の高野元洋(柄本明)と相談し、真相を明らかにせず、全ての罪を元洋に被って貰うことにする。紛糾した謝罪会見を無事乗り切り、一安心した章次の携帯電話に、中学生の娘・朝美(夏未エレナ)から意味深なメールが入った。聞けば、同級生の川本里花(寉岡萌希)が自殺したという。
どこか朝美の様子に違和感を覚えた章次。<中略>朝美から話を聞こうにも、うまく誤魔化されてしまう章次は、ある日、里花の母・川本佳代(樋口可南子)から呼び出される。雑貨屋を営む佳代は、里花の死後、死の真相を知りたいと色々探したという。そして出てきた一冊のノート。そこには、『尾崎朝美へ』とだけ書かれていた。章次はノートを持ち帰り朝美から話を聞くことにするが、「パパしつこい」と言われ、それ以上問い詰められなかった。
その頃、先の不祥事で一人責任を被ることになった元洋は、章次を追い回すようになり、いつの間にか秘書として振る舞い出すようになる。
<中略>佳代へノートを返却に行った章次は、これ以上、朝美を問い詰めて、妻亡きあと二人で築いてきた家庭を壊したくないと本音を打ち明ける。一方の佳代は、死んだ里花のことを話すうち、感情がエスカレートして錯乱し、泣き出して章次に抱きついてしまう。
その数日後、佳代は勝手に朝美を連れ出す。誘拐だと騒ぐ章次は元洋と共に、結局一晩、悶々として過ごす。
その頃、朝美と佳代は横浜のホテルにいた。佳代は里花との思い出話をするが、朝美はそれをただ聞くだけ…。翌朝、何事もなかったかのように、朝美が戻ってきた。佳代と何を話したのか聞く章次に対し、「ほんとのことはいってない」と朝美。章次が社員研修で教える、本心を隠して笑顔を作る“おまじない”の『テキーラ』を、朝美も良く使うと言い、少なくとも二人の間では信頼関係が築けていたと思う章次はショックを受ける。
章次は佳代を訪れ、常識はずれな行動をしたと責めるが、逆に佳代は章次の常識を笑う。朝美と里花との間に本当は何があったのか、再び章次は朝美と向き合う。やがて朝美は重い口を開き、里花が自殺する二日前の出来事を話し始めた…。
章次、朝美、佳代、そして企業不祥事を起こした国松と元洋が、「本当」と「嘘」の間で揺れ、全ての真相が明らかになっていく……。
<番組紹介より>

いつもながら心に残る台詞と、昨今の偶発性によってつながれたドラマではなく必然によってつながれたストーリーに感じ入った。
彼女が自殺した真相を朝美は語るのだが、そのことで逆に佳代になじられてしまう。ショックをうけて部屋に閉じこもる朝美。その話を聞いて、国松が朝美にひとこと話がしたいと訪れる。
国松は閉じられたままの朝美の部屋の前で語りかける。
「本当のことを言った人はえらい。本当のことを言った人はほめられないといけない。本当のことを言った人がなじられるのなら、だれも本当のことをいわなくなってしまう。だから本当のことを言った人はほめられないといけない」

そして、題名にもなっている「テキーラ」。「テキーラ」というと自然に口角があがる。そうすると自然に笑顔ができる。アランの幸福論の帯にも書かれていた「幸せだから笑っているんじゃない。笑っているから幸せなんだ」という言葉を思い出した。