ホタルの栖

昨日は中野光座に芝居を見に行ってきました。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~tetsu21/05-01kouen.html
育ヶ丘団地心中事件をモチーフにしたものなのですが、僕は大変面白かったです。新転位の芝居が合わない人も面白いところはいっぱいあったので、是非見に行ってみるといいんじゃないでしょうか。(25日まで)

その舞台の面白さとは別に、この心中事件というのは借金がかさんでにっちもさっちもいかなくなった家族の話なんですが、その様子を見ていて、記憶の奥底に封印していた自分の子供のころを思い出しました。

芝居のように僕の家にも借金取りからひっきりなしに電話がなり、家の前に夜車が止まるたびに家中の電気を消し、父親は親戚や友人すべてにお金を借りていろんなひとからつまはじきになっていました。子供の僕も自分が借りたのではないとは言え、僕の父親が無心したお金で育ててもらっていると思うと親戚の前に行くと、親戚の目が「自分の親のことなんだから少しは恥ずかしいと思いなさい」といっているような気がした。父親は芝居の主人公と同じでウソばかりついて、「払った、払った」といってウソをつき、その二日後に母親にばれて喧嘩をするという繰り返し。多分この人は親戚にも友人にも家族にも子供にもウソをついて、誰に本当のことをいっていたのかなと今になって思う。多分誰にも本当のことを言っていなかったと思うのだけど。

芝居の主人公と決定的に違うのは、主人公は「かえさなきゃー、かえさなきゃー」ってずっと思って悩んでた。僕の父親も「かえさなきゃー、かえさなきゃー」って最初は思ってたんだろうけど、こりゃ無理だわとどっかで気づいて、「ないもんはない」「あると思うんやったら家中探してみたらええねん」っていう最悪の開き直り。
でもそれがよかったんだろうね。「かえさなきゃー、かえさなきゃー」って思ってたら、「カエセナーイ、死んでお詫びするしかなーい」なんてことになりかねなかったわけで。

でもほんと親父はほんとなんていい加減な人間だろうと思ったね。よく母親に怒られて「あんたはお父さんそっくりや」とか言われるのが僕にとって一番のけなし言葉だったから。

親父みたいに恥知らずに生きて、借金1億くらいあっても特に暗そうな顔もせんとね、会ったら西武ライオンズ三国志の話ばっかりして、自分の愛人にプレゼントする花を盗むのを手伝わせたりして、ガンになってもう死ぬって言われているのに「俺が生きる確率はヒフティーヒフティーや」とかいってたりして、死ぬときも満面の笑みで死んでたけどね。
そんな親父の葬式では僕の母親以外は誰も泣いてなかった。そんな親父は世間ではろくでもない人間なんだけど、そんないい加減な親父でもうまくはいえないけど今思うとね、良かった?なと思うわけです。
昨日の芝居をみて、忘れていたちょっとだけしんどかった日を思い出しました。